2019年03月29日
人を動かす基本動作
基本動作の正しい理解
■戦う準備の躾づくりとは
中小企業の業績が上がりにくい根本原因は、中小企業自体が抱える
問題の特性が大いに関係している。それは基本動作が出来ず、
決め事を守らない、組織を統一させる仕組みやルールと基準が
出来ていない等の中小企業の生い立ちからくる人・組織の問題でもある。
戦う準備の躾づくりとは『自社内の規律・ルール・基準・方法』を
知り・理解し・実践出きるレベルになる事である。
基礎的な個人資質や働く環境整備が大企業・中堅企業と比べ、
見劣りする中小企業はどうしても当り前レベルの底上げが必要となる。
無理に、当り前レベルの底上げを軽視して、『やれ戦略展開だ』と
叫んでも上手くいかない。
この『当り前レベル』が出来ずに現場に赴いて、いくら大将が笛を
吹いても集団は彷徨集団になり、戦いには勝てない。
野球に例えるといくら個人技能のボールを早く投げる、ボールを遠く
飛ばす技能があっても、チームプレイである監督のサインを理解できない、
送りバントが出来ない集団では勝てない。
いくら良い素材があっても、戦う為の準備が出来ていない為に、
負け戦に臨む指揮官(経営者)と戦士(社員)の集団となる。
社内改革の実行に向け重要な事は、社員に改革の実行協力とその内容の
理解を促進すると同時に実行が出来る環境を整備する事が重要である。
これが出来ないと絵に描いた餅に終わり、成果は出ない。
■会社のインフラが基本動作
基本動作とはよく聞く言葉であるが、
しかし、その意味合いをよく理解している会社は少ない。
私共が取り組む仕事の70%は規則性の仕事の繰り返しと
いわれている。この規則性の仕事を円滑に進める会社の
インフラが基本動作である。
しかも、基本動作は、やる気・実行力・継続力があれば、
誰でも・いつでも・どこでも業績を上げる事が出来る性質を持つし、
費用は必要ない。
反面、意識の継続がなければ、すぐにやらなくなるのも基本動作である。
そして基本動作の乱れが引き金となり、業績が下降していく。
会社は人間動物園である。このバラバラ集団を束ねるのに、
必要な一体感の基礎的な環境を創る要素の一つが基本動作であり、
その種類は大別すると、4種類ある。
■業務上の基本動作
これはどの会社・店舗でもやらねば仕事にならない
基本的な動作である。
内容として・挨拶・身だしなみ・発声・朝礼・終礼・電話・
指示命令・報告連絡・会議⑨クレーム対策・整理・整頓・
問題解決等がある。
多くの会社で上手くできていないのが、この業務上の基本動作である。
基本動作を出来る様にする為には、先ず各基本動作の
内容・意味をよく理解する事である。例えば、『報告・連絡』とあるが
『報告』と『連絡』は違う。連絡とは事実を正確に伝える事ある。
報告とは事実を正確に伝え、その対策まで考えて伝える事である。
多くの会社で見受けられる報告は事実を正確に伝えるのみで対策が入らない。
対策が入らないとは『メッセンジャー』である。メッセンジャーではなく、
『コーデイネイター』になるのが報告であり、自ら対策を考えるから
経験がノウハウとなり、知恵になるのである。
次に基本動作のやり方を決め継続・習慣化して『体得』する事である。
体得とは体がその動作を覚えており、何も考えずに出来るレベルである。
朝起きたら、必ず顔を洗う。意識して顔を洗う事ない。
それは生まれてから何万回と繰り返したから、無意識に出来るのである。
基本動作が出来ないのは体得していないからであり、体得させる為の
社内の基本動作パターンが出来ていないからである。
■業界固有の基本動作
これは業界らしさが表れる基本動作で、同じ挨拶の『いらっしゃいませ』でも
新鮮なネタを扱う寿司屋と金銭を取扱う銀行では違う。寿司屋は威勢が
良い挨拶でネタの新鮮さをアピールするし、銀行では1円たりとも
間違えてはいけない特性を持つが故に丁寧な対応になる。家具屋だったら、
机の持ち上げ方を覚えないと仕事にならない。このように業界固有の
基本動作はやらねば仕事を覚えないので必然的に最低レベルの基本動作は
修得していく。
■会社・部門固有の基本動作
これは自社・自部門でしかやらない固有の基本動作であり、
この基本動作が多いほど、ノウハウがある事になり、他社と差別化が出来る。
〇上座の営業スタイルを体現する靴修理のミスターミニッツ
スーパーの地下の片隅にある靴の修理屋である。靴を修理する時には
代わりの靴を持っていないために靴が『もの質』状態になっている。
店員さんは客が修理を依頼している部分以外の修繕箇所を見つけ、
『ここもダメだから修理しますね』と知らず知らずのうちに
別の修理の注文を取っている。『修理してもよいですか』とは決して尋ねない。
これは上座の営業スタイルを体現化している固有の基本動作である。
〇挨拶ひとつを固有の基本動作にするたこ焼きの京だこ
お客様にたこ焼きを手渡しする時に『有難うございました』ではなく、
『おいしく召し上がれますように』と挨拶して手渡す。言われると非常に
嬉しく感じる固有の基本動作である。このように、会社固有・部門固有の
基本動作を持つ会社・部門は勝ちパターンを持っているから強いし、
人も育てやすい。本来のこの基本動作は業暦が10年以上ある会社には必ずある。
しかしそれが会社・部門固有の基本動作として位置づけされておらず、
知らず知らずのうちに、出来る人しか出来ない様にしているから標準化が図れない。
肝要な事は立派な経営方針があっても、可能性の高い商材を開発・開拓しても、
現場レベルの戦術・戦闘の基本動作ができなければ成果は出ない事を
理解していただきたい。
■リーダーの基本動作
四つ目はリーダーの基本動作であり、リーダーが自分の体験・経験のみで
マネージメントをとるのではなく、人の動かし方・組織での仕事を
スムーズにする方法である。
何故、リーダーシップ・マネージメント機能が発揮しにくいのか?
それは大きく4つの要因があると考える。
○日本の義務教育にはリーダーシップ、マネージメントに関する
カリキュラムはなく、出来ないのが当たり前である。
○自分のDNA・体験のみのやり方でマネージメントを執ろうとするから
上手くいかない。学生時代にクラブのキャプテン等を通じて自然に
体得した人も居るが、その人は例外パターンである。
○マネージメントを執る時間を計画していない。
○基本的にプレイングマネージャースタイルであるので、
環境的にも執りにくい。
この様な要因から本来必要な機能が発揮出来にくい。
そうした中でリーダーが戦術機能を発揮させる為には、
リーダーシップの基本動作をよく理解し、セオリーどおりに進める事であり、
戦術を考える時間、確認する時間を仕事として確保する事が重要である。
私も多くの中小企業幹部と触れ合うが、能力がないから出来ないと感じた事はない。
機能を発揮させる環境整備が出来ていないから、今は出来ていない事に過ぎない。
リーダーの基本動作は7つのポイントがある。これは息を吸ったら、
吐くようにチームを機能させるためのセオリーである。それがリーダーの
基本動作7大原則である。
○目標・具体的計画立案の原則(目的・目標の立案・共有化)
○統制限界の原則(一人の管理職が管理能力を越えない)
○組織機能稼動の原則
(必要な職務内容の範囲決定・メンバー間の整合性・重複回避)
○命令機能の原則(何をやるべきかを明確にする指示・命令機能の統一化)
○調整機能の原則(計画進捗の現時点測定と即対応)
○公式・ルール化の原則(学習能力・効果の発揮・標準化・パターン化)
○業績評価と動機づけの原則(業績評価を行い、やる気対策)